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2014年3月23日日曜日

Vol.18 女友達がピットインしてきました


大切な女友達が男と別れました。

ちゃんと付き合って、ちゃんと別れた。大人だからね。

これからは、コックピットに入ってきたオーバーヒートのF1カーを


女友達というメカニックが、至れり尽くせりでケアするのであります。

大丈夫、すぐに車道に戻したりはしないから。

ただ、素早く黙々とやるよ、私たちは。

手慣れたもんだぜ。



あの頃15歳だったあなたも私も、

40にもなってまだ、ホレたハレたをやってるとは思っていなかった。

しかし残念ながら二人ともまだ、

弛んだ体にムチ打ってホレたハレたをやっている。

あなたの24歳の失恋と、30歳の失恋と、そして今回の失恋を見てきたよ。

それ以外はあんまり数に入れなくていいよね?

自分からは別れられなかったあなたが、

自分から別れを告げられたんだからすごい進歩だ。

決して悪い人ではなかったよ。あなたのことも、真剣に好きだったと思う。

あなたも彼のことを真剣に好きだったよね。

お互いを真剣に好きなふたりが別れを選ぶのって

ホント文字にすると意味がわからんね。

でもそうするしかないことって、あるある。



私たちはもう、何度も何度も誰かとくっついちゃ別れてきてるので、

この傷を治せるのは時間しかないと知っている。

だからあなたは、どんどん時間が過ぎていって欲しいってずっと言っていて、

でも時間が過ぎていくといろんなことが過去になって、

別れた相手はどんどん自分と関係のない人間になって、

現在進行形で共有できるものがなくなっていって、

それはそれでつらいんだよな。



「正しいことをしているのは自分でもわかっているんだけど、

自分がいま、正しいことをしたいのかどうかが分からない」

とあなたは憔悴していた。

そうだよね、そうだよね。正しさってなんだろうね?



それにしても、終わりそうな恋愛というのは

なんでああもハッキリ、終わることがわかるんだろう。

あなたは「カウントダウンはちょっと前から始まっていた」と言っていたけれど、

それがどういう感覚は、私にも身に覚えがあるよ。



どうにかしてうまく運転していこうと思っているのに、

どうにもうまくいかなくて投げだしたくなって、

なにがいちばん大事なのかを考えて考えて、

その順位が1時間ごとに変わって、

やっぱりふたりでいることが大事だと思って、

なんとか気を取り直してまたハンドルを握る。



大丈夫大丈夫って言いながら、だましだまし走り続ける。

それを何十回と繰り返して、それでもどうしてもエンジンがかからない日がくる。

なんとかエンジンはかかっても、車が前に進まない日がくる。

終わりそうな予感はあんなにずっとあったのに、

ああ、もうどうにもならんよな、という瞬間が、ある時突然やってくる。

あなたがボロボロになった状態でピットインしてきたのがわかったから、

私たちは無線で合図をしながら、誰かはそばに居られるようにするよ。

あなたがそうしてくれたように。



青い空を見ただけで彼を思い出すから家から出られないって言ってたけど、

そんなに早く忘れようとしなくてもいいと思うよ。

そんなに早く忘れられるわけないけど。

なにかと自信喪失することばかりの毎日のなかで、

自分のことを心底好きな男がいなくなるのはキツいよ。わかるよ。

でもさ、すんごいガッカリする事実なんだけど、

時間が経てばいつか大丈夫になるって、

私たち知ってるからねー。ホント残念。



別れたんだから、しばらくは何があっても会わない方がいいってのが定説だし、

それがいちばんだと思うけど、

私はあの時にそれをやって、実はすごく、まだ後悔してる。

別れたからと姿を消して完全な音信不通にすることは、

実は自分の身を守るためだけじゃなくて、

別れた男への当てつけのつもりだったんじゃないか? って

思い出してはまだ胸が痛むことがある。

あなたの失ったものは大きかったわよって、後から後悔すればいいわ!って

なんかドラマの主人公気取って酷いことしてたんじゃないかと、

別れた男に罰を与えた気になってたんじゃないかと。

傲慢だよねー。

それでいて、私はずっと向こうからの連絡を待っていたよ。



あ、自分の話になっちゃった。ごめんごめん。

終わらせ方やタイミングは、そんなにスパっとできないよね。

そうした方がいいのはわかってるんだけどさ。

ズルズルしていいことなんて、ひとつもないからね。



25年あなたを見てきて、今回の判断はまったく間違ってなかったと思うよ。

でも、正しいことがなんの担保にもならないこともよくわかる。

もう一回言うけど、彼も悪い人ではなかったよ。悪い恋ではなかった。

さみしくてつらい日は必ず終わるから、

まぁそんなこと言っても今はまったく無意味なんだけど、

とにかく私たちがそばにいるから大丈夫だよ。

5人体制ぐらいでシフト組むから心配しないでよ。

女友達は万能薬でなきゃいけないからね、お互いに。

年をとろうが、太ろうが痩せようが、皺が増えようが男と別れようが、

あなたは素晴らしい女だよ。それは保証するから信じておくれ。

いつかこの失恋から立ち直ったことさえ、

生きる自信につなげるぐらいのしぶとさを

私たちは持ってることを忘れないで。




……というようなエモーショナルでポエムちっく(ポエジーではない)なエントリを、

ずいぶん前に書いて保存しておいた。

当事者であるこの女友達が、すっかり元気になったのを記念してポストします。

やはり私たちは強い。時に弱いけど、残念なほどに強くもある。



読み返すと、私の感情が高ぶっていたのが自分でもよくわかります。

でもそれを本人にぶつけることは、あの時できなかった。

結婚も出産もせず生き長らえていると、

生きることはまるで賽ノ河原で石を積むのと同じに思えてきますね。

それでも、いくつになってもみずみずしいあだ花を咲かせることは楽しい。

勤労と納税と己の再教育には抜かりがないので、

国民としての義務は果たしていると言えよう。

当面は、これでいいのだ。

2 件のコメント:

  1. ありがとう!
    時期がきたらこれを読ませたい女友達がいます。日本語な読み書きが???なヤツなんで、ふりがなバージョン作っておこうかな…

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